妊娠中は熱中症になりやすい?夏の水分補給と暑さ対策、受診の目安
「妊娠してから、暑さが前よりこたえる気がする」 「水分はどのくらいとればいい?スポーツドリンクも必要?」
気温も湿度も高い日は、少しの外出でも心配になりますよね。妊娠中は体が赤ちゃんの分まで熱を逃がそうと働くうえ、脱水にもなりやすいため、暑さの影響を受けやすいとされています。
この記事では、妊娠中の熱中症を防ぐための水分補給や室内・外出時の工夫、体調が悪くなったときの対処、受診したいサインをまとめます。
妊娠中はなぜ熱中症に注意が必要?
妊娠中は血液量や心拍数などが変化し、体はいつもより多くの仕事をしています。CDC(米国疾病予防管理センター)は、妊娠中は自分と赤ちゃんの両方を冷やすために体がより働くこと、脱水になりやすいことから、妊娠していないときより熱疲労や熱中症が早く起こる可能性があると案内しています。
熱中症は炎天下だけのものではありません。高温多湿の部屋、風通しの悪いキッチンや浴室、車内など、室内でも起こります。つわりで飲食しにくい、嘔吐や下痢がある、発熱しているときは、暑さが重なると水分と電解質のバランスを崩しやすいため、とくに注意しましょう。
暑さを必要以上に怖がるより、「暑い日は早めに休む」「のどが渇く前に飲む」を習慣にすることが大切です。
熱中症・脱水の初期症状
熱中症の症状は、妊娠中によくある体調不良と似ていることがあります。次の変化があれば、「いつもの妊娠症状」と決めつけず、まず涼しい場所で休んでください。
- めまい、立ちくらみ、ふらつき
- 頭痛、吐き気、だるさ
- 汗が多い、または暑いのに汗が出ない
- 筋肉痛、こむら返り
- 動悸、脈が速い感じ
- 強いのどの渇き
- 尿の回数が少ない、尿の色が濃い
- お腹が張る、いつもより張りが増える
厚生労働省は、返事がおかしい、意識を失う、けいれんする、体が熱いといった症状を重症のサインとして挙げています。自力で水が飲めない、意識がもうろうとしている場合は、無理に飲ませず、すぐに119番へ連絡してください。
妊娠中の水分補給、どうすればいい?
のどが渇く前に少しずつ
水やカフェインを含まない飲み物を、朝起きたとき、食事、外出前後、入浴前後などに分けてこまめに飲みましょう。一度にたくさん飲むと、つわりや胃の圧迫で気持ち悪くなることがあります。小さなコップやストロー付きボトルを使い、少量ずつ続ける方法でも大丈夫です。
必要な量は、体格、妊娠週数、食事、汗の量、持病などで変わります。「全員が毎日何リットル」と数字だけで決めず、尿の色や回数、のどの渇き、体調も目安にしてください。心臓・腎臓の病気などで水分量を指示されている方は、その指示を優先しましょう。
普段は水を中心に
日常的な水分補給は、水や飲み慣れたノンカフェイン飲料が基本です。スポーツドリンクには糖分や塩分が多いものもあるため、暑いからといって毎回置き換える必要はありません。
長時間たくさん汗をかいた、食事がとれない、嘔吐や下痢があるときは、電解質を含む飲み物や経口補水液が選択肢になることがあります。ただし、経口補水液は日常の飲み物ではなく、脱水時のための食品です。妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、腎臓病などがある方は、塩分・糖分・水分のとり方を主治医に確認してください。
服用中の薬は自己判断で中断しないでください。薬によっては暑さへの反応や水分バランスに影響することがあるため、心配な場合は主治医や薬剤師へ相談しましょう。
室内でできる暑さ対策
「家の中だから大丈夫」と我慢せず、体感と室温をこまめに確認しましょう。
- エアコンで無理のない室温に調節する
- 遮光カーテンやすだれで日差しを減らす
- 扇風機やサーキュレーターで冷気を循環させる
- 通気性・吸湿性・速乾性のある服を選ぶ
- 冷たいタオルなどで首まわり、脇の下、足の付け根を冷やす
- 料理は暑い時間を避け、電子レンジなども活用する
- 熱いお風呂や長湯を避け、入浴前後にも水分をとる
エアコンの設定温度と実際の室温は同じとは限りません。日当たり、湿度、部屋の広さ、体調によって快適さは変わるので、決まった数字にこだわらず「暑い・苦しい」と感じる前に調整してください。
停電やエアコンの故障時に備え、涼しく過ごせる家族の家や公共施設を確認しておくと安心です。
外出・通勤の日に気をつけたいこと
外出前に、環境省の「暑さ指数(WBGT)」や熱中症警戒アラートを確認しましょう。危険な暑さが予想される日は、急ぎでない予定をずらすことも立派な対策です。
- 日中の暑い時間を避け、朝夕に予定を移す
- 日傘やつばのある帽子を使う
- 締めつけの少ない、風通しのよい服を選ぶ
- 飲み物を持ち歩き、外出前から水分をとる
- 日陰や冷房のある場所でこまめに休む
- 駅まで歩く距離や乗り換えを減らす
- ひとりで我慢せず、家族や職場に体調を伝える
妊婦健診など外せない予定は、比較的涼しい時間への変更、タクシーの利用、付き添いを頼むことも検討しましょう。職場が暑い、屋外作業がある、休憩や水分補給が難しい場合は、早めに上司や産業医、主治医へ相談してください。
熱中症かも、と思ったときの対処
軽いめまいや頭痛、吐き気などが出たら、活動をやめて次のように対応します。
- エアコンの効いた室内や風通しのよい日陰へ移動する
- 衣服をゆるめ、横になるなど楽な姿勢をとる
- 首まわり、脇の下、足の付け根を冷やす
- 意識がはっきりしていて飲めるなら、水分と塩分を少しずつ補給する
- ひとりにならず、家族や周囲の人に知らせる
休んで飲めば必ず大丈夫、とは限りません。症状がよくならない、悪化する、何度も繰り返すときは医療機関へ相談しましょう。受診先に迷う場合は、かかりつけの産科へ連絡し、妊娠週数と症状、暑い環境にいた時間、水分がとれているかを伝えてください。
すぐ受診・救急要請したいサイン
次の症状がある場合は、ためらわず救急車を呼んでください。
- 呼びかけへの返事がおかしい、意識がもうろうとしている
- 自力で水分を飲めない
- けいれん、失神がある
- 体が非常に熱い
- 強い息苦しさ、胸の痛みがある
また、次のような妊娠に関する変化がある場合は、涼しい場所で休みながら、かかりつけの産科へ速やかに連絡しましょう。
- 規則的なお腹の張りや強い腹痛が続く
- 性器出血や、破水を疑う水っぽい液体が出る
- 胎動を感じていた時期に、急に動きが少ない・感じない
- 強い頭痛、見え方の異常、顔や手の急なむくみがある
- 水分をとれないほどの嘔吐が続く
これらは熱中症だけで説明できないことがあります。「暑さのせいだろう」と様子を見すぎないでください。
夏を乗り切るためのミニチェック
暑い日は、朝のうちに次の5つを確認してみましょう。
- 暑さ指数や熱中症警戒アラートを確認した
- 飲み物を手の届く場所に用意した
- エアコンを使える状態にした
- 外出時間と移動方法に無理がない
- 体調が悪いときに連絡する人・産科がわかる
全部を完璧にできなくても大丈夫です。ひとつずつ「早めに涼む」「早めに飲む」「早めに相談する」を選ぶことが、自分と赤ちゃんを守ることにつながります。
まとめ
妊娠中は体が熱を逃がすために多く働き、脱水にもなりやすいため、暑い日はいつも以上の注意が必要です。
- 熱中症は室内でも起こるため、エアコンを我慢しない
- のどが渇く前に、少量ずつこまめに水分をとる
- 普段は水を中心にし、塩分や経口補水液は体調や持病に合わせる
- 外出前に暑さ指数を確認し、時間や予定を調整する
- 意識がおかしい、自力で飲めない場合はすぐ119番へ連絡する
- お腹の張り、出血、胎動の変化などは産科へ相談する
暑い日に予定を減らしたり、周りを頼ったりするのは、決して大げさではありません。体調の小さな変化を見逃さず、無理のないペースで夏を過ごしてくださいね。
参考情報
- 厚生労働省「熱中症予防のために」
- 厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」
- 環境省「熱中症予防情報サイト」
- CDC「Heat and Pregnancy」
- CDC「Clinical Overview of Heat and Pregnancy」
※この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。妊娠経過や持病によって適切な水分・塩分量は異なるため、気になる症状や指示がある場合は主治医へ相談してください。