妊娠中にインフルエンザ予防接種は受けられる?時期・副反応・接種後の過ごし方
「妊娠中にインフルエンザの予防接種を受けても、赤ちゃんに影響はない?」
「妊娠初期だけれど、安定期まで待ったほうがいいのかな」
秋が近づくと、産婦人科や職場から予防接種の案内を受け、迷う方も多いのではないでしょうか。妊娠中は体の変化により、インフルエンザにかかったときに重症化しやすいとされています。その一方で、おなかの赤ちゃんのことを考えると、接種に慎重になるのも自然なことです。
この記事では、妊娠中に接種できるワクチンの種類、受ける時期の考え方、よくある副反応、接種前後に確認したいことをまとめます。
妊娠中もインフルエンザ予防接種を受けられます
結論からいうと、妊娠中は、注射で接種する不活化インフルエンザワクチンを受けることができます。
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の「産婦人科診療ガイドライン―産科編2023」では、妊婦へのインフルエンザワクチン接種は予防に有効で、母体と胎児への危険性は妊娠全期間を通じて極めて低いと説明しています。国立成育医療研究センターも、妊娠初期の接種で先天異常の発生率が増えたという結果はみられず、予防接種が勧められると案内しています。
不活化ワクチンは、感染する力をなくしたウイルスの成分を使うため、接種によってインフルエンザを発症することはありません。
ただし、ワクチンを受ければ絶対に感染しないというわけではありません。発病する可能性を下げ、かかった場合の重症化を防ぐことが主な目的です。
妊娠初期・中期・後期のいつ受けてもいい?
不活化インフルエンザワクチンは、妊娠初期・中期・後期のどの時期でも接種できます。「安定期に入るまで必ず待つ」という決まりはありません。
日本では例年12月から3月ごろに流行し、厚生労働省は12月中旬までに接種を終えることが望ましいとしています。日本の産科ガイドラインでは、接種後に効果が現れるまで約2週間かかることを踏まえ、10月から12月中旬が理想的な時期とされています。
とはいえ、次の妊婦健診まで待っているうちに接種機会を逃したり、流行が早く始まったりすることもあります。12月中旬を過ぎたから意味がないと決めつけず、地域の流行状況や出産予定日、医療機関の予約状況を確認して相談しましょう。
接種時期を決めるときのポイント
- 今の妊娠週数と出産予定日
- 地域や職場、家族の周りでの流行状況
- 産婦人科や接種予定の医療機関の予約開始日
- 発熱や体調不良がない日を選べるか
- 健診や里帰り、入院予定との兼ね合い
接種を希望するときは、早めに産婦人科へ相談し、どこで受けられるかも確認しておくと安心です。
なぜ妊娠中の接種が勧められるの?
妊娠中は免疫、心臓、呼吸器などに変化が起こるため、インフルエンザにかかると重い合併症につながりやすくなります。日本の産科ガイドラインでは、妊婦は非妊婦より入院率が高かった報告や、感染により早産などのリスクが増える可能性が示されています。
予防接種には、次のような役割があります。
- 妊婦さん本人のインフルエンザ発病を防ぐ
- 感染した場合の入院や重症化のリスクを下げる
- お母さんにつくられた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんへ移る
- 生後すぐでワクチンを受けられない時期の赤ちゃんを守る助けになる
日本小児科学会は、妊婦への接種により、生後6か月までの乳児のインフルエンザ発症が減ったという研究を紹介しています。お母さんのためだけでなく、生まれてくる赤ちゃんを守ることにもつながるのですね。
妊娠中に選ぶのは「注射の不活化ワクチン」
インフルエンザワクチンには、注射する不活化ワクチンと、鼻へ噴霧する経鼻弱毒生ワクチンがあります。
妊婦さんに推奨されるのは、注射の不活化ワクチンです。経鼻弱毒生ワクチンは生きたウイルスを弱毒化して使用するもので、妊婦への安全性が確立されていないため推奨されていません。
予約時や問診時には妊娠中であることと妊娠週数を必ず伝え、ワクチンの種類を確認してください。産婦人科以外の内科や職場で接種する場合も同じです。
接種前に医師へ伝えたいこと
次の項目に当てはまる場合は、予約時または接種前の診察で医師へ伝えましょう。
- 妊娠週数、出産予定日、これまでの妊娠経過
- 当日に発熱や強い体調不良がある
- 過去の予防接種後に発熱、全身の発疹、強いアレルギー症状が出た
- ワクチンの成分、鶏卵、鶏肉などでアレルギー症状が出たことがある
- 心臓、腎臓、肝臓、呼吸器などの持病がある
- けいれんや免疫不全の既往がある
- 現在使っている薬や、ほかの予防接種の予定がある
厚生労働省は、発熱している方や重い急性疾患にかかっている方は、回復してから接種するよう案内しています。アレルギーや持病があるから必ず接種できないという意味ではなく、医師が体調や治療状況を確認して判断します。
母子健康手帳やお薬手帳を持参し、腕を出しやすい服装で行くとスムーズです。
接種後に起こりやすい副反応
インフルエンザワクチンの副反応は、妊娠していない方と同じようなものが中心です。厚生労働省によると、主に次の症状がみられます。
- 注射した場所の赤み、腫れ、痛み:接種した方の10〜20%
- 発熱、頭痛、寒気、だるさ:接種した方の5〜10%
これらは通常、2〜3日で治まります。当日は激しい運動を避け、いつもよりゆったり過ごしましょう。入浴は体調に問題がなければできますが、接種した場所を強くこすらないようにします。
痛みや発熱が気になる場合は、市販の解熱鎮痛薬を自己判断で使わず、接種した医療機関や産婦人科へ相談してください。妊娠中に使用できる薬はありますが、成分や妊娠週数、持病によって選び方が変わります。
接種後にすぐ受診したいサイン
重いアレルギー反応はまれですが、接種後比較的早く起こることがあります。医療機関から指定された時間は院内で安静にし、体調を確認してから帰宅しましょう。
次の症状がある場合は、速やかに医療機関へ連絡してください。
- 息苦しさ、ゼーゼーする、のどが詰まる感じ
- 顔や唇、まぶたの腫れ
- 全身に広がるじんましんや強いかゆみ
- 意識がぼんやりする、ぐったりする
- 高い熱が続く、症状が強くなっている
呼吸が苦しい、意識がおかしいなど緊急性が高いときは119番へ連絡します。
また、接種後であっても、出血、規則的で強いお腹の張り、破水が疑われる水っぽい液体、胎動の明らかな減少などがあれば、「副反応だろう」と様子を見ず、かかりつけの産婦人科へ連絡してください。
接種後も続けたいインフルエンザ対策
ワクチンだけで感染を完全に防ぐことはできません。流行期は次の基本的な対策も組み合わせましょう。
- 外出後や食事前に手を洗う
- 人が多い場所では状況に応じてマスクを使う
- 部屋を定期的に換気する
- 睡眠と食事をできる範囲で整える
- 家族に発熱や咳があるときは、タオルや食器の共用を避ける
- 同居家族も予防接種を検討する
家族みんなで予防を意識すると、妊婦さんが家庭内で感染するリスクを減らす助けになります。
インフルエンザかもと思ったら早めに連絡を
急な発熱、頭痛、関節痛、強いだるさ、咳などが出たら、受診前に産婦人科や医療機関へ電話しましょう。感染対策のため、入口や受診時間を分けている場合があります。
妊娠中でも使える抗インフルエンザ薬があり、早い時期に治療を始めることが重症化予防につながります。薬の種類は妊娠週数や症状を踏まえて医師が判断するため、手元にある薬を使ったり、受診を我慢したりしないことが大切です。
よくある質問
Q. 妊娠に気づかず予防接種を受けました。赤ちゃんは大丈夫?
不活化インフルエンザワクチンは妊娠初期を含む全期間で接種でき、妊娠初期の接種で先天異常の発生率が増えたという結果はみられていません。まずは接種したワクチン名と日付を確認し、次の妊婦健診で伝えましょう。体調に異変がある場合は健診日を待たずに相談してください。
Q. 去年受けた場合も、今年の接種は必要?
インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行が予測されるウイルスに合わせて製造されます。厚生労働省は、前年に接種した方も、その年の接種を検討するよう案内しています。
Q. 産婦人科以外でも接種できますか?
内科や地域の医療機関、職場などでも接種できる場合があります。妊婦への接種に対応しているかを予約時に確認し、妊娠週数、持病、アレルギー、服用中の薬を伝えてください。産婦人科から個別の指示を受けている場合は、その内容を優先します。
Q. 接種費用は健康保険の対象ですか?
インフルエンザ予防接種は、原則として健康保険が適用されない任意接種です。費用は医療機関によって異なり、自治体や勤務先が独自に助成している場合があります。予約先、自治体、勤務先へ確認しましょう。
まとめ
妊娠中は、注射の不活化インフルエンザワクチンを妊娠初期から後期まで接種できます。
- 安定期まで必ず待つ必要はない
- 流行前の10月から12月中旬ごろが接種時期の目安
- 妊婦さん本人の重症化予防と、生まれてくる赤ちゃんを守る助けになる
- 経鼻弱毒生ワクチンではなく、注射の不活化ワクチンを選ぶ
- 接種後の赤みや痛み、発熱などは多くが2〜3日で治まる
- 呼吸困難や意識の変化があれば、すぐに医療機関へ連絡する
「受けたいけれど不安」という気持ちは、問診のときにそのまま伝えて大丈夫です。妊娠週数や体調、出産予定日をもとに産婦人科と相談し、納得できるタイミングを選んでくださいね。
参考情報
- 厚生労働省「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」
- 厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―産科編2023」
- 国立成育医療研究センター「妊娠中のお薬Q&A」
- 日本小児科学会「妊婦への接種が推奨または考慮されるワクチン」
※この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の診断や接種可否を判断するものではありません。接種時期や体調、副反応については、かかりつけの産婦人科医や接種を受ける医療機関へご相談ください。